2015.3.17 (tue)

3回裏:肥後橋『釧路食堂』


 

♪銀座へぇ~ はとバスが走る~

歌舞伎座をぬけ 並木をすりぬけ♪

 

井上陽水の「TOKYO」を口ずさみながらやって来たのは、大阪は肥後橋。今日、僕はある重要人物に会わなければならない。このコラムのコーナーに協力してくれるという酔狂な男が現れたのだ。

 

その名もヤンさん

 

彼は西へ東へありとあらゆる居酒屋、酒場を渡り歩く名店ハンターだ。このコラムで酒場放浪記的なこともいずれやろうと思っていて、ヤンさんに協力してもらおうと相談を持ちかけたら、二つ返事で引き受けてくれた。これからヤンさんと共に名店、優良店をじゃんじゃん紹介しようと思いますので何卒よろしくお願いします。今日はその第1回目。今回紹介する店は関西では珍しい、北海道の新鮮な魚介料理を堪能できる『釧路食堂』を紹介します。



 

地下鉄四つ橋線肥後橋駅から徒歩で5分もかからない場所に位置するこのお店はカウンター9席のみの隠れ家的な印象を受けるお店だが、かといってすごく敷居の高い感じではなく、アットホームな感じがする佇まい。大将も中村七之助似のイケメンで気さくな人ですよ。

 

先ずは生ビールで乾杯。


さっそく手始めにヤンさんが注文した「秋鮭の酒粕漬け焼き」を頬張る。大将の地元ではポピュラーな郷土料理で自ら漬けているとのこと。

 

ただでさえ美味い北海道の肉厚な秋鮭に手間暇掛けた酒粕漬けが、香りと旨味をより一層引き立てる。はいっ!この時点で名店決まりと膝を叩いて、舌鼓をうつのも束の間、次に登場したのは「蝦夷鹿のモモ肉たたき」。みなさん、北海道て魚介系だけが名産じゃなかったんですね。肉系もちゃんと名産あるんですね。

 

過去に何度か鹿肉を食べたことはありますが、ちょっと臭みが強い肉だなと思ったのが正直な印象でして、でもこのエゾシカの肉は意外にその臭みがなく、肉の風味もしっかりしていて食感もいい感じでした。

 

あー駄目だ。

書いてたらすごく食べたくなってきた。

 

さぁ、みなさんおまたせしました。

 

造りの盛り合わせです。まさに魚料理界のキングオブキング。北海道の新鮮な魚介が煌々と鎮座してます。魚介フェチのおっさん二人はこの眩しい光景を見て思わず手を合わさずにはいられませんでした。

 

羅臼ゴジラ海老、ごっつい体躯とは裏腹に、海老独特の繊細な甘みとぷりぷりの食感をしっかりと楽しむことが出来ます。羅臼、地図で見ると遠いですね~。でもここで食べることが出来るんですねぇ。すごいですね~嬉しいですね~、と思わず淀川長治さんの名調子で言いたくなるくらいにグッドでした。

 

舌触りのいいタコの刺身やツブ貝の芳しい磯の香りとコリコリとした食感も最高。羅臼の豊かな海で獲れた身厚な鯖を大将の職人技で仕上げた〆鯖、芳醇な甘みとまろやかな食感をこれでもかと味わえる蝦夷のバフン雲丹。程よく弾力がありカニの風味を閉じ込めた花咲カニのお腹の部位にあたるふんどし。どれも質、量共に申し分ない内容で食べ応えのある造り盛り合わせでした。

 

 

そして、最後に登場したのは「黒鱧(くろはも)の白焼き」。

 

 

「八っつぁん、鱧てぇと湯引きした鱧に梅肉和えて嗜むもんじゃあねえのかい?なぁ八っつぁんや」

 

「へぇ、番頭はんが仰るようにわてらが育ったくにではそやってよう食います」

 

「てぇとこの白焼きは、どういう了見なんだい。あたしゃ初めてでねぇ、どうも合点がいかないねぇ」

 

「まぁ番頭はんそう言わずに、箸つけておくんなはれ。

 北海道の羅臼ちゅうとこの黒鱧でしてな、白焼きにして食べたらこれまたうまいんですわ」

 

「そうかい?八っつぁんが勧めるんだったら間違いねぇんだが…」

 

「どうぞ、番頭はん」

 

「どないでっしゃろ?」

 

「八っつぁん、うまい!べらぼうにうまい!」

 

 

と、創作落語の一席も打ちたくなるくらいに美味かった。本当におすすめです。ここでは説明は不要かと。一度ご賞味あれ。北海道の豊かな海産物を楽しむことができる関西では稀なお店です。


大将のお父さんや親戚が故郷で漁師を営んでおり、その日とれた新鮮な海の幸をお店に直送してくれるので、季節ごとに北海道の旬の素材を生かした自慢の料理が楽しめます。気さくな大将にその日のおすすめを気軽に聞いてみるのも一興じゃないでしょうか。本当にいいお店でした。是非是非、よってみて下さい。

 

 



キム・ガンホの酒場放浪記 vol.1

 

北海道名物 釧路食堂

〒550-0002

大阪府大阪市西区江戸堀1-9-14 双葉ビル2F

TEL:06-6443-0182

アクセス:地下鉄四つ橋線肥後橋駅から徒歩5分

 

ヤンさん

 

1976年1月5日生まれ。玉造にある「BARペヨーテ」で泥酔した当コラム筆者に運悪く捕まる。90年代オルタナティヴ・ロックをこよなく愛するグルメ夢先案内人。