2015.7.24 (thu)
6回表:映画『バトルシップ』『エクスペンダブルズ』
今回は映画二本立てです。
二本ともアメリカ映画特有の大味な作品です。この手の映画を二本立てで上映していた映画館も今はトンと見かけなくなりましたね。つい最近閉館した天六にあったホクテン座を思いだし、なんだか泣けてきます。
バトルシップ -BATTLESHIP-
ユニバーサル・ピクチャー配給
上映時間 131分
監督:ピーター・バーグ
脚本:ジョン・ホーバー/エリック・ホーバー
出演:テイラー・キッシュ/浅野忠信/ブルックリン・デッカー/リアーナ/アレクサンダー・スカルスガルト/リーアム・ニーソン
<ストーリー>
日米各国が集まった海上軍事演習中のハワイ沖で謎の巨大物体が飛来。地球外生命体とコンタクトを取ろうと発動した”ビーコンプロジェクト”の研究者達は彼等はこちらの呼びかけに応じてくれた友好的なエイリアンだと推測する。だがその推測に反して謎 の巨大物体は演習中の艦船に攻撃を仕掛けるのだった。
これまで宇宙人VS地球というプロットの映画は数多く存在します。ローランド・エメリッヒ監督の『インディペンデンス・デイ』やスティーヴン・スピルバーグ監督のその名もズバリ『宇宙戦争』、ハリウッド映画得意のブロック・バスター映画は山のようにあります。超大作ではありませんが、変わったのでM・ナイト・シャマラン監督の『サイン』とかありますが…。だいたいは人類総出の”総力戦”で、陸空の各国の軍(だいたいアメリカ主導)あるいは一般市民の反抗、科学者の智略で応戦、撃退してきましたが、今回の「バトルシップ」は局地戦、海が舞台です。
現代の海上兵器VS宇宙人。
各国の最新鋭駆逐艦やイージス鑑が宇宙人の科学力が生み出した宇宙船や武力にどれだけ対抗できるかが見ものっちゃあ見ものなんですが、映画が始まってすぐ"これ楽勝じゃね?"と思うほどこの映画のエイリアン達は間抜けなんです。映画序盤に宇宙船が地球に飛来するシーンがあるんですが、いきなりエイリアンの宇宙船一隻が地球軌道上の人工衛星にぶつかり香港の街に落下!
えっ?あのー、恒星間航行をして来たんですよね。
それ、すごい科学力と思うんですが…
じゃあ、あれですか?ワープで来た?
だってすごい遠くから来て今まで小惑星とかはどうしてたの?
それは避けれて、人工衛星はダメなんだ。
まぁでも香港に落ちた宇宙船もなんかに変形してビル街で大暴れするんだろうな、と思いつつ見てるんですが、ピクリとも動かない。
本当に事故ったんだ!
香港の人たち、めちゃ迷惑!!
この映画のエイリアンたちは突っ込みどころ満載で、主人公達が作戦を立案してる最中も何故か敵宇宙人は攻撃してこなかったり(てことは敵の宇宙人は武士道、騎士道精神を重んじる種族?)主人公アレックス(テイラー・キッチュ)とナガタ艦長(浅野忠信)が大型狙撃銃で敵宇宙船のフロントガラスを最も簡単に割って沈めるとか、そもそもハワイ沖に張り巡らせたバリアーを自分達の母船や宇宙船に張り巡らせたら最強なのに、それやらないんだ。
突っ込みだしたら本当にきりがありません。
演出面でも荒さが目立ちます。
アレックスがバーで知り合ったサマンサ(ブルックリン・デッカー)のために閉店した店に忍び込みチキンブリトーを入手(一応レジにお金置いて)するシーンがあるんですが、バックで流れていた音楽がなんと”ピンク・パンサーのテーマ”。今どきその演出てどうなん?とさすがに耳を疑ってしまいました。で、当たり前の様に御用となるダメダメ主人公アレックス。兄貴の海軍士官であるストーン(アレクサンダー・スカルスガルト)にボコボコにドヤされます。
<で、ここでタイトルがバァーン! >
でも何故か場面が変わると、アレックスはそれなりの階級が与えられた海軍士官になっています。しかも大尉です。えっ?士官てそんなすぐなれるの?貯金65ドルしか持っていない酔っ払いの男が、いくら兄さんのストーンが海軍の士官だからと言ってちょっと無理あるような…
これまた、突っ込みだしたらきりがありません。
でもいいんです、細かいことは。
こういう映画なんです。
ライムスター宇多丸氏がこの映画を絶妙な言葉で表現しています。
「奇祭」と…。
そうなんです、「奇祭」なんです。お祭りなんです。穿った見方をせず、ありのまま受け入れようじゃありませんか。でも流石に200億円掛けた映画、最後の母船との戦闘シーンは圧巻です。爽快痛快映画なのは間違いありません。是非是非見てみてください。
さぁ続いて、こちらもお祭り映画。
エクスペンダブルズ -EXPENDABLES-
ライオンズゲート配給
上映時間103分
監督:シルヴェスター・スタローン
脚本:シルヴェスター・スタローン/デヴィット・キャラハム
出演:シルヴェスター・スタローン/ジェイソン・ステイサム/ジェット・リー/ドルフ・ラングレン/ランディ・クートゥア/テリー・クルーズ/ミッキー・ローク/ブルース・ウィリス /ジゼル・イティエ/エリック・ロバーツ/スティーヴ・オースティン/ゲイリー・ダニエルズ/デイヴィッド・ザヤス/アーノルド・シュワルツェネッガー
<ストーリー>
腕利きの傭兵軍団エクスペンダブルズ。リーダーのバーニー(シルヴェスター・スタローン)はチームのマネージャーを務めるツール(ミッキー・ローク)から仕事の依頼を伝えられ謎の男チャーチ(ブルース・ウィリス)と接触する。依頼主であるチャーチからの依頼内容とは南米の小国ヴィレーナの独裁者であるガルザ将軍の抹殺であった。
「みんな、あちゅまれー!」と『ランボー』シリーズ、『ロッキー』シリーズを手掛け主演したハリウッド映画を代表するアクションスター、シルヴェスター・スタローン御大の呼びかけに集まった豪華アクション俳優陣。『トランスポーター』シリーズでおなじみジェイソン・ステイサムを筆頭に『少林寺』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズや数多くのカンフー映画に出演した中国武術界の至宝ジェット・リー、出ました『レッド・スコルピオン』『ロッキー4/炎の友情』のドラゴ役で有名、元極真空手スウェーデン代表ドルフ・ラングレン、猫パンチ…じゃなかった『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『ナイン・ハーフ』、近年では『レスラー』で見事復活を果たしたミッキー・ローク、『ダイ・ハード』シリーズの今もバリバリ現役ブルース・ウィリス、そしてそしてスタローン御大と人気を二分した80年代、90年代のアクション映画の金字塔を打ち立てた『ターミネーター』シリーズ、『コマンドー』『プレデター』の元カルフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーほか、実写版『北斗の拳』ケンシロウ役の元キックボクサー、ゲイリー・ダニエルズ、元NFL選手テリー・クルーズ、元UFCベビー級チャンピオン、ランディ・クートゥア、元WWFベビー級チャンピオン、スティーヴ・オースティンと各界で活躍した”筋肉猛者”達も参戦。本当に豪華ですねぇ。
スタローンとシュワルツェネッガーが同じスクリーンに登場するだけでもアクション映画ファンなら垂涎モノ。ですが、そのシーンがなんとも因縁めいた感じなんです。チャーチと接触するため訪れた教会で、かつてバーニーと戦場で同じ釜の飯を食ったトレンチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)が現れる。トレンチがCEOを務める民間軍事会社もこの依頼を受ける候補に挙がっていた。
バーニーとトレンチ、久方ぶりの再会もどこ吹く風、のっけから舌戦が繰り広げられます。
「お前ちょっと痩せたんじゃないか?」と嫌味っぽくバーニーの筋肉の衰えを指摘するトレンチ。「お前の方こそ貫禄がついたんじゃないか?」とトレンチの腹を見ながらバーニーが即座に応戦。それを見兼ねたチャーチが「褒め合うのは後にしろ」と舌戦に割って入る。もうこのシーンを見る為に映画を見てもいいくらいスタローン、シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスの面構えや佇まいがいいんです。
一旦収まったと思われた舌戦がさらに続きます。
チャーチから具体的な依頼内容を聞いたトレンチはこれでは割りが合わないと依頼を断わりバーニーに譲ります。「友人に譲るよ。彼はジャングルが好きなんでね」とシュワちゃん自身が「ランボー」シリーズを揶揄している風にも見えます。バーニーもといスタローンも負けていません。トレンチの去り際、チャーチが「やつの狙いは?」とバーニーに尋ねると「大統領のイスだよ」とこの当時まだ任期が残っているカルフォルニア州知事のシュワちゃんのことをしっかり皮肉っています。
でもこのシーン、この映画自体の構成を表している重要なシーンだと思いました。
ようはVS、このあと始まる”誰対誰”といった夢のような対決を示唆している様に見えたんです。例を挙げるとジェット・リー対ドルフ・ラングレンによる中国武術vs極真空手やUFCライトヘビー級、ヘビー級二階級王者ランディ・クートゥア対WCW、WWF世界ヘビー級王者スティーヴ・オースティンによる総合格闘技VSプロレスと映画の枠を超えた、現実の世界でも成し得なかった”夢のカード”がこの作品で見ることができます。映画ファンのみならず格闘技ファン、プロレスファンも楽しめる作品です。ノゲイラ兄弟も出演してますよ。
あと個々の役者達もバランス良く見せ場があり、これからアメリカ・アクション映画界を背負って行くであろう肉体派中堅俳優達にも満遍なくスポットが当たるようになっていて、スタローン御大の配慮、アクション映画に対する底深い愛を感じずにはいられませんでした。特にジェイソン・ステイサムは主役と言っていいほど活躍します。
銃撃戦も見ものですよ。ラストは救出しなくてはいけないヒロインのサンドラ(ジゼル・イティエ)の存在を忘れてしまったかのようにドンパチします。この映画もライムスター宇多丸氏がこれ以上ない言葉で表しています。
それは「名球会」です。
名球会のOB戦とか想像してみて下さい。金やんがいかに王さんのことが好きか、山本浩二と衣笠がベンチで楽しげに談笑している姿や中村ノリと清原のホームラン競争、野村克也に愚痴られる古田や、ファンの子供に対してマサカリ投法で真剣に豪速球を投げる大人気ない村田兆治、まさにこの『エクスペンダブルズ』に出演している個性豊かな俳優たちのようではありませんか。
古今東西のアクションスターが織りなす、豪華絢爛アクション百花絵巻。
女子の方は苦手な映画かも知れませんが、たまには男臭い映画でクラクラするのもいいんじゃないでしょうか。こちらも超弩級の爽快痛快映画です。是非是非、見てみて下さい。