7月14日(月)第3回「カジノで大はしゃぎ - Exciting Casino」


 

今日はタルサ市内をジャッキーに案内してもらうことになった。

 

ジャッキーの家から車で約30分ほど走るとビル群が見え始め、しばらくすると市内随一の高さを誇るBOKBank Oklahoma)タワーが僕たちを迎えてくれた。程なく市内をまわり、市内中心部にある駐車場に車を停めて、近くにあった赤レンガ仕立てのコーヒーショップに休息がてらお邪魔することにした。

店内に入ると涼しくて快適な感じでとてもいい雰囲気だったが、店内は禁煙だからとタバコを吸う僕のために気を使ってくれたジャッキーが、外のテラスでコーヒーを飲もうと言ってくれた。

 

裏口を出ると向かって左側の壁に漢字で「愛」と黒字でスプレー書きがしてあったので、コーヒーを持って来てくれたウェイトレスに尋ねると、昔オーナーがタトゥーショップをしていたのでその名残りだと僕たちに説明してくれた。

 

 

「あの壁に書いてある漢字の""ってどういう意味なの?」

 

「あれは"Love"という意味なんだ」

 

「とても素敵な漢字ね」

 

あどけない笑顔を浮かべて彼女はそう言った。

コーヒーを飲み終えた僕たちはウディ・ガスリー・センターという、かつてアメリカ中を列車で回り、労働者や貧困にあえぐ人々の感情を歌ったフォーク・シンガーの祖、あのウディ・ガスリーにまつわる資料が展示された施設に行くのだが、あいにくこの日は休館日だったので道路を挟んで真向かいにあるガスリー・グリーンという、これまたウディ・ガスリーを冠した公園に行くことにした。

 

公園内は手入れした芝生が広がりライブが出来るステージもあった。さながら野外フェスがこれから始まる感じのこの公園で、近々ウディ・ガスリーの誕生祭があるらしく、地元のミュージシャンたちがこぞって彼の歌を歌うのであろう。公園に立ち寄った僕は、言わずもがな、この偉大なるフォーク・シンガーの影響力を感じずにはいられなかった。後日行くガスリー・センターが本当に待ち遠しい。

ジャッキーも久しぶりの市内散策なのか、彼女が運転してくれた車は少し迷いながらオクラホマ・ジャズ・ホールに向かった。

 

ロジャーもここでライブをしたと聞き、どんな感じのホールなのか楽しみに歩いていると、見えてきたのは1920年代、いわゆるローリング・トゥウェンティーズを彷彿とさせるジャズ創世記に建てられたであろう、奥ゆかしい建造物が目に飛び込んできた。

 

早速館内に入ると、広いエントランスにこれまで出演した数々のミュージシャン達にまつわる資料が展示されていて、中でも僕の目に留まったのは、おそらくは創始者であろう胸像の左後ろにあのジェシ・エド・デイヴィスの写真が飾られていた。彼は僕のギター・ヒーローの1人で、数々のアーティストたちとの名演、作品に参加したスライド・ギターの名手である。ロジャーのファースト・アルバムも彼がプロデュースした作品のひとつだ。

 

写真を見た瞬間、本当に胸が熱くなった。

 

なんというか、写真が飾られている場所が彼らしく、目立つことのない、今まで彼が残した足跡を表さんばかりに佇んでいる。惜しくも44歳の若さでこの世を去った彼だが、こうして写真を見ていると、彼の絶妙なスライド・ギターが遠くで聞こえてきたように思え、目頭が熱くなった。

 

彼のようなギタリスト、コンポーザーは未だ現れていない、本当に唯一無二の存在だったと僕は確信している。

この日、日中の気温が38度を越えていた。

 

市内を歩いて散策している僕たちはちょっとバテ気味だったので、ジャッキーの提案でクーラーが効いていて、ジュースも飲み放題のカジノに行くことになった。

 

人生初のカジノである。

 

市内から車でちょっと行った国道沿いに「リバー・スピリット・カジノ」という、これから僕らがお世話になるカジノホールがあった。ホール内はとても広く、無数のスロットマシンが整然と並べられ、あたかも日本のパチンコ店にも似た様相にちょっと親近感がわいた。

 

ジャッキー曰く、「合衆国憲法でカジノの経営権はネイティブ・アメリカンの人達が持てる権利なの。だからここのチェロキー族はリッチな人が多いのよ」と説明してくれた。なるほど、何ともフェアな国だなと感心しつつ、僕らは今日お世話になるスロット・マシンを探した。

 

「これにしましょう」

 

ジャッキーがちょこんと座った台がMr.マネーバッグという、極々シンプルなスロットマシンだった。ペシペシと打ち始めてしばらくすると、僕の台に異変が起きた。

 

筐体中央のドラムが赤く光り出して、そして逆回転し始め、あれよあれよと図柄が揃いだした。なんと30ドルの賭け金がわずか数秒足らずで400ドルまでになった。さらに驚くジャッキーの台にも異変が起き、逆回転したあと7の図柄まで揃った。僕たちはワーキャー言いながら思う存分楽しんだ。「こんなにエキサイトしたのは久しぶりよ!」とジャッキーも満面の笑みを浮かべていた。

 

僕らは手を合わせ、天を仰いだ。

 

これはロジャーが勝たせてくれたに違いない、と僕とジャッキーは思ったからだ。ありがとうロジャー!真剣に打っている地元ギャンブラーをよそに、僕らは何度も何度も手を合わせ天を仰いだ。

 

あの屈託ないロジャーの笑顔を思い出しながら。


Road To Tulsa Photo Gallery Vol.3