7月17日(木)最終回「ワン・グッド・フレンド - One Good Friend」


 

今日は朝から雨だ。

 

滞在期間中初めての雨。今日僕は日本に帰国する。身支度を終えリビングに行くと、ザックがパソコンのディスプレイと睨めっこしている。朝の見慣れた光景、これも最後だなと思うとすごく寂しい気持ちになった。

 

ザックが僕に気付くと「やあ、キムおはよう。今日見送りに行けなくてすまない。なんせ株取引は朝イチが肝心でな、目が離せないんだよ。また今度、お互い元気で会おう」と硬い握手を交わした。彼の手は幼少期から習っている柔道のせいで分厚くゴツゴツしていて、でもなんだか温かみもあった。

 

そうこうしているうちに身支度を終えたジャッキーも2階から降りてきて、僕らは車があるガレージの方に向かった。ガレージから車を出して牧場を出る直前になって、僕は大事なことをやり忘れていたことに気づいた。

 

「最後にロジャーの墓に手を合わせていいかい?」

 

「ええ、もちろん!」

 

ジャッキーは快く承諾してくれた。雨のなか、ロジャーの墓に手を合わせ最後の墓参りを済ませた僕は車に乗り、牧場をあとにした。

 

雨のサウス・ルイスを車で移動している僕は、あのロジャーの眠る木をしばらく、見えなくなるまで視線を傾けながら、心の中で牧場の動物達との別れを惜しんだ。馬のウィリアム、パトリオット、グレイブ、そしてロバのクイード・サルドリッチ、犬のボボ、チャーリー、ローラ、ジェイク、クロウィン・ローズ、生前ロジャーが家族同様に愛した動物たち。

 

みんな元気で…

また会おう!

 

 

空港に着き、いよいよジャッキーとも別れの時がきた。

 

「本当に来てくれてありがとう!とても楽しかったわ。天国にいるロジャーもすごく喜んでいたと思う。体には気をつけて、また会いましょう!」僕を抱きしめながら彼女はそう言った。

 

「ジャッキーも体に気をつけて。本当にありがとう!」僕は満面の笑顔で答えた。

 

不思議と2人してしんみりした別れの挨拶にはならなかった。お互い思っていたのかもしれないが、ここで涙涙の別れになると、もう二度と会えない気がしたのだろう。

 

「Goodbye Jacque !」

 

僕はそう叫びながら空港に入るまで手を振り、ジャッキーは彼女独特の無邪気な笑顔で答えてくれた。ジャッキー5日間本当にありがとう!

 

ロジャー、また来るよ。

今度はみんな連れて…

 

 

 

7月19日(土)18時、伊丹空港。

僕は地元大阪に戻ってきた。

 

えっ!18日じゃないの?と思う人がいるのでちょっと説明すると、タルサ国際空港でキッチリとトラブったのである。

 

チケットは発券されたのだが、チケット・カウンターが搭乗者リストに僕の名前をあげておらず、搭乗口直前でキャンセル扱いになり、ミスを認めた航空会社側に問い詰めるも、その日のダラス国際空港行きの便が全部埋まっていているとのこと、どう足掻いても今日中に帰れない状況になってしまった。またジャッキーのところにお邪魔しようと思ったのだが今日は仕事らしく、かえって迷惑になると思い、空港泊と相成った。(写真はタルサ国際空港午前2時。あまりにもやることがないので困り果てる著者近影)

 

 

とまぁ、どうにかこうにか戻ってきた僕は19日に伊丹空港に無事到着したのである。到着後、空港ロビーに行くと出迎えに来てくれたcitymusic・柳本篤くんと友達の四方さんがいた。柳本くんは開口一番「無事に帰ってきてくれて本当に良かった…」と涙目で僕に熱く訴えた。彼はトラブった僕を最後までサポートしてくれたので、余計心配だったのだろう。その様子を同じく出迎えにきてくれた四方さんはそれを引き気味に笑っていた。

 

なんだか微笑ましい光景が僕に無事帰ってきた安堵感を助長させた。

 

とりあえず帰国祝いということで僕らは、あとで合流するスチョリと食事をしようということになり、梅田の繁華街へと繰り出した。見慣れた電光掲示板、阪神百貨店、家路を急ぐ大勢の人々、タルサとはまるで正反対な街。

 

僕はここで生まれ、育った。

 

だが、なぜか不思議なことにホームシックのような感覚に陥ってしまった。変な話、タルサに帰りたい気持ちになった。それほど僕にとってタルサは特別な場所なんだと…。土産話は大いに盛りあがってしまい、終電を逃した僕とスチョリは帰りが同じ方向なので一緒にタクシーで帰ることにした。途中、スチョリが遠くを見つめながら話し出した。

 

「タルサに最初に行ったのがガンホでほんま良かったと思てるよ。今度はわしが行かな!」

 

「よっしゃ、俺も行くから。トラブったけど任してくれ」

 

「大丈夫か?ハハッ!それ聞いてちょっと不安になってきたわ」

 

スチョリ特有の戯けた言い回しで答えてくれた。

 

 

僕らを乗せたタクシーは、梅田から徐々に南へ南へ南下して行く。

この古い道は続く 

でこぼこで岩だらけだけど

吹きつける風は 相変わらず冷たいし

この余裕のない暮らしにも

すっかり年季が入ってきたけれど

 

今夜 家に着くのは少し遅くなるかもしれない

でも泣かないでおくれ

大丈夫さ どうってことない

この道が どんなに狭く曲がりくねっていても

誰でも必ずひとりは 大事な友達を持っているものさ

俺にとっては君がそうなんだ

 

渦に呑み込まれたこともあった

どっちに向かっていいのか さっぱり分からなかったけど

流砂に足を取られたこともあった

本当に たくさんのことを学んできたもんだな

 

そう 誰でも皆ひとりは よき友人を持っているものさ

そして君は俺にとって そういう存在なのさ

 

ロジャー・ティリソン 「ワン・グッド・フレンド」

 

 

 

 

 

今回、ロジャーの墓の所在確認のため情報収集に努めたcitymusic柳本篤氏とケイ・コーツ氏、11年前ロジャーを呼んで下さった長門芳郎氏、ドリームズヴィル・レコード小川雅己氏とスタッフの方々、ラリーパパ&カーネギーママ各メンバー:チョウ・ヒョンレ、キム・スチョリ、水田十夢、辻凡人、そしてロジャーを愛したすべてのファンの方々へ感謝の意を申し上げます。

—2014.9.13 キム・ガンホ

 

 

Thanks to citymusic, Kay Cordtz, Yoshiro Nagato, Masaki Ogawa, dreamsville records staff, rallypapa and carnegiemama : Cho Hyeongrae, Kim Sucholi, Tom Mizuta, Bondo Tsuji. And all fans who loved Roger.


Road To Tulsa Photo Gallery Vol.6