「ロジャーの墓参りに行く」
ガンホくんからそんな連絡が入ったのは4月下旬のことだった。かねてからオクラホマに行くということは聞いていたが、詳細な場所も、泊まる宿も、日程も、何もかもが決まったうえでの連絡だと思っていた。しかしメールはこう続く。「いや、実はお墓の場所がわからへんねん、なんとかならんかな」。そんなこと、僕だってわからない。音楽通の上司に尋ねてみたが「わかるわけがないだろう」と一蹴される始末だった。
無謀で純粋でまっすぐなガンホくんの決意表明。もう気持ちは固まっている。この気持ちをサポートするため、徹底的に調べることにした。
オフィシャル・サイトはFacebookしかないロジャー・ティリソン。やはり情報量は少なかったものの、ひとつの記事を発見することができた。それが「rollmagazine.com」というサイトに掲載されていたロジャーの訃報を伝える記事だった。
http://www.rollmagazine.com/roger-tillison-oklahoma-jukebox-poet-1941-2013-2/
この記事を書いていたのがKay Cordtz(ケイ・コーツ)という人物だった。ロジャーの情報はこれ以上収集できないと思って、このケイさんについても調べてみた。フリーランスのライターをやっているらしい、ザ・バンドのリヴォン・ヘルムとも親交がある、そして彼女はFacebookをやっている。徐々にそういうことがわかってきた。そこで意を決してFacebookから直接メッセージを送ってみることにした。
「この記事を書いたのはあなたですね?10年前、ロジャーが来日したときに僕の大切な友人が在籍するバンド、ラリーパパ&カーネギーママがツアー・バンドを務めました。そのバンドのギタリストであるキム・ガンホが、ロジャーのお墓参りをしたいと考えています。場所を知りませんか?」
つたない英語でどれだけのことが伝わるか、甚だ疑問だったがメール送信から数時間後、ケイさんから返信があった。
「ハロー!そう、その記事は私が書いたものだわ。ロジャーとは1970年からの友人よ。彼が亡くなったときは本当にショックだった。でもそういうことならロジャーの奥さんに聞いてみるわね。少し時間をくれるかしら。きっといい知らせを届けるから」
にわかには信じがたい内容だった。そしてとても丁寧な文章に心を打たれたことは、この先もずっと忘れることはないだろう。
結局、その日から僕はケイさんとこまめに連絡を取り合って、彼女を通じてロジャーの奥さんであるジャッキーにラリーパパのことを伝えてもらった。ジャッキーはラリーパパのことをよく覚えていてくれていたそうだ。もちろんガンホくんの気持ちをしっかりと伝えることも。それはケイさんのフットワークの軽さ、丁寧さ、そしてロジャーへの愛情、その全てを僕たちに注いでくれたおかげだ。どんなに感謝してもしきれない。本当にありがとう。いつかあなたに会えることを願って。
Thank you Kay!
We really appreciate you!
—2014.9.4 citymusic 柳本篤